2017/07/09

僕の好きなジャケット 20選

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音楽にはメッセージと思想、社会と歴史、愛と思い出が込められていて、それを目に見える形にしたものがジャケットなんだ。一見なんのメッセージも込められていないジャケットにだって実はなんのメッセージも込めなかったというメッセージが込められている。
そんな戯言、僕の好きなジャケット  20選。


1. Thieves Like Us - Really Like To See You Again



ドア越しに聞こえる音楽、パーティは向こう側で続いている。世界は扉で隔てられ孤独が夜を支配する。存在の耐えられない軽さ、自分は特別なんかじゃなかった、居場所を失い夜を彷徨う彼女の愛。


 2. The Caretaker - Patience (After Sebald)



スノーグローブの中、世界は箱に収まった。周りを囲む海、水はどこにも逃げなくて、僕らは壁に阻まれ留まることを強いられる。しかしだからこそ音楽は悲しく澄んで響き渡りそれが冷たく暗く心を揺さぶる。


3. Elliott Smith - Elliott Smith


栄光と挫折、成功と失敗、どちらもたいした違いはない、どこにも届かず落ちていく。違うのは唯一姿勢だけで、それだけで世界は違って見える。僕らは宙に浮かんでいて、死に少しずつ近づいていく。悲しさを受け止める術、知っているから生きていける。


4. Heaven - Lonesome Town

 

ありはしない完璧な幻想、決して後悔しない映画のようなスクリーンの向こう側の佇まい、音楽なんていらないくらいに全てを物語るジャケット。悪夢だとしても今夜の夢に出て来て欲しい。触れられない向こう側の美しさ。

5. The Big Pink - A Brief History Of Love


これは現実なのか夢なのか、生きているのか違うのか?見えているのかいないのか?感じるからといってそこにあるとは限らない、そうトム・ヨークも言っている(ThereThere)。やはりそう、美しさは幻でだからこそ美しい。

6. Sky Ferreira  - Night Time My Time



少年誌が僕らに教えてくれたたどり着くべきピンクの頂、水滴のついたレンズの向こう画面越しの彼女、それはやはり触れられないからこそ美しい。壁の色と髪の色、配色も完璧。

7. The Birthday Party - Hee-Haw



跳ね続ける死神ロデオ、ロシア構成主義が云々かんぬん。終わりの見えない闇の時代を生き抜く術、衝動を解放ししかし決して振り落とされぬ事、そうでなければたちまちに。死はなにも特別なものではなくすぐそこにある。


8. The Cure - Standing on a Beach



老人と海。おぉムルソー、アルベール・カミュ、異邦人をモチーフにしたデビュー曲でそう呟いたロバート・スミス、これは狙ってやっているシングルス。すっかり爺さんになってしまった気分さ、それは時の流れも感じさせ海辺に立つ。


9. The Beach Boys - Surf's Up


 

うなだれる馬上の騎士、力及ばず時は過ぎ去り戻りはしない。どうにもならない無力感、だけど生きていくため僕らは癒やされなければならなくて、だから君がDisney Girlsが必要なんだ。打ちひしがれた心、再び立ち上がるための穏やかで静かな時間、それはまるで海の底にいるような……。


10. The Beatles - Revolver

 


真似されるにはわけがある。一見シンプルに見えつつも仕掛けが満載。魔法がかかった音楽に魔法をかけられたジャケット、時を超えいくつもの模倣を生み出すそれ、白黒だけど色あせない魔法の軌跡。


11. Acid House Kings - Advantage Acid House Kings


 


世界一のテニスジャケ。TennisよりずっとTennisっぽい。女子を抜き、男三人にしたこのセンス、生まれる絶妙なバランス、内容と特に関係ないところも高ポイント。アドバンテージ以上に最高なナイスなジャケット。


12. Goat Girl - Country Sleaze / Scum


溢れんばかりのセンス、ラフトレードの文字を体に踊り出しそうなこのジャケット(っていうかビデオで実際踊っている)やはりものをいうのはこのセンス。形になったアイデア、Goat Girlは全てがいい、大好き。


13. Hazel English - Never Going Home



まさかの裏ジャケ。世界中のハンバート氏を唸らせる素敵なポージング。わかるかい?少女性とはそれはつまり脚だ。そこに宇宙の真理とロマンスが詰まっている。詳しくは新潮文庫版のロリータを参考にされたし。


14. Summer Twins - Limbo



女の子がじゃれてるだけじゃん、君はそう言うかも知れないけれど僕も言う、じゃれてるだけだから良いんだよ。そもそもじゃれるって何?戯れるだよ。つまり可愛い、それ以外はどうでもいい。可愛さの正義もしくは世紀、そしたら後は愛でるだけ。


15. The Flaming Lips - Yoshimi Battles The Pink Robots



優しさ溢れる大戦争、毎日飲んでるビタミン剤、わかるかい?君の知っている人はいつかみんな死ぬ。優しさの意味、深い悲しみ、感じる心、すべてはきっと繋がっている。


16. Jarvis Cocker - Further Complications


 

一番好きなジャーヴィス・コッカー、時代を通り抜け上下も関係なくその瞳でじっと前を見つめる。優しさと愛おしさ(しかしどこか寂しさも感じる)、いつかはこんな風になりたいとベッドでポーズを真似してみる。


17. Prefuse 73 / The Books – Prefuse 73 Reads The Books E.P.



都会の喧噪、一杯のコーヒー、そして本、お洒落の全て。後ろの会話をBGMに現実との境を、紙の手触りを確かめる。交差する世界の日常、格好いいものは格好いい。


18. Bobb Trimble -  Iron Curtain Innocence


無垢なる心、純粋だから傷ついて傷つくからこそ破壊する。迫り来る世界から自らを守る為に手にする武器、触れたら壊れてしまいそうな優しい暴力、覚悟を決めた心が壊れる前のその瞬間。


19. Metronomy - Nights Out


 

この上ないダサさ、でもこれでいい。だってMetronomyはイケてちゃいけないんだから。上手くいかなかった夜の上手くいかなかった三人、昨日もそうだったし今日もそう、だけど明日こそ、そんな日々がずっと続くと思っていた。


20. Klaus Johann Grobe - Im Sinne Der Zeit


体に挟まったボール、笑顔で抱きしめ合うけれど決して交わることはない。おかしな悲劇の温度差、それは僕にグッバイ、レーニン!のベルリンを思い起こさせて……なんだかそんな気分になる在りし日の思い出。





2017/07/02

2017 上半期のベストトラック

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1.  JW Ridley -  Everything (Deathless)





曇り空のDIIV、それはもはやJoy Divisionなんじゃないかと錯覚させられる、T・S・エリオット風の歌詞、ルックスも含めてJW Ridleyは全てが好き。っていうかもうこのビデオが最高でそれだけでずっとついていこうと思わせてくれる。持っている7インチとはアレンジが違うんだけれど、どっちもいい。もはや頭の中で勝手なRemixが流れるくらいたくさん聞いた最高のデビュー盤。



2. HMLTD - Music!




突き進むHMLTD。シングルを出すたびに懐の深さを見せつける。決して勢いだけでも格好だけでもない本物のMusic!次の曲も絶対良いはずだって確信がもてる、そんなことを言いたくなるくらい完全に心を掴まれた。
大仰さと繊細さを兼ね備えた近未来SF、輝くネオンの世界のスペースバンド。次の一手が本当に楽しみ。そしてライブも見たい、YouTubeで見られるライヴ映像はまるでSF映画のワンシーンみたいんなんだもの。80年代の少女漫画が夢見た未来が今なんだなってなんだかそんなことを思ったりもする。


hmltd | apple of my eye | live @ tinals





3. Heaven - Lock & Key




ジャケットを見ただけでわかる素晴しさ。This is the girl!そう叫びたくなるほど完璧なデビッド・リンチマナー、マルホランド・ドライブをブルーにベルベッドしそのツイン・ピークスに顔を埋める、そいつが今の僕の夢。滅茶苦茶言っているって自分でもわかっているけれど、目の前に現れた完璧な幻想は、それはもはや悪夢で僕の心を捉えて放さない。スクリーンの向こう側からやってきたファムファタール、抗うことの出来ない魅力。




4. Joy Again - Another Song About Ghosts






寂しさと優しさが共存するこの感情、劇的ではなけれどしみじみとした愛がそこにはあって、世界にそっと寄り添うJoy Again。日常はささいな出来事の繰り返しなのかもしれないけれど、この愛おしさは特別で、そこはかとないいじらしさもそこにはあって……とにかくあぁもう好きだなと言いたくなる。普通に特別なこの感情、その名は愛。




5. Draa - Even In My Dreams (All My Life)




眉毛が太い人は実は繊細、僕は世界の真実を掴んでしまった、ほらモリッシーをみてみろよ。そんな戯言を言いたくなるくらいに青く美しい、Draa。真実は求める意思を持つものだけに与えられ、夢は消えてしまうからこそ美しい。永遠に続くことがないとわかっているからこその輝き、美しさとは常に危うさと共にある。いつか失われてしまうもの、その光はこんなにも美しい。












2017/06/14

Real Estate - In Mind 〜ニューバランスのハーモニー〜

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僕はDucktails派だからね、それは絶対変わらない。そんな事を言いながらReal Estateの新しいアルバムを聞いたら無茶苦茶いいじゃないか。なんだこれ?Julian Lynch?Julian Lynchの効果かい、違うのかい?

新しい何かが始まる予感、期待せずにはいられない完璧なイントロのギターの音色、針を落とした瞬間、再生ボタンを押した瞬間に訪れる満足感。ライヴに行ってこの瞬間に帰ったとしてもたぶんきっと後悔しない(帰らないけれど)。


Real Estate - Darling (Official Video)


洗練されたなんでもなさ、背伸びしていないように見えて絶妙なところにストンと落とすこのセンス、グッドメロディがグッドメロディ然としていなくてごく自然に耳に入って染みこんでいく。つまりはとっても聞きやすいってことだけど心に留まり流れていかない、これは最高のバランスのニューバランス。



Real Estate - Stained Glass (Official Video)


マジか?こんなに良かったのか、Real Estate。このバランス感覚はちょっと凄いよ。なんでもないけどなんかいい、馴染みの喫茶店みたいな心地よさ。過度な装飾も輝くロマンスもドキドキする興奮も全てがあるけど全部はない、様々なスパイスを調合して絶妙なバランスで素晴らしい音楽を作っている。

これはとんでもないのか?なんでもないのか?わからない。ただのポップミュージック?そうかもしれない、でもだけど、いやだから、なんでもないけどそれがいい。素敵にちょうど、最高のポップミュージック。ファインプレーに見せない凄さ、そんな趣。これはいい。






2017/05/11

僕のHoops 、希望・あきらめ・自己憐憫

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It's so cool.
あきらめと希望、そして悲しみ、それらが混ざり合った感情。僕らは傷ついてむくれてあきらめて、仕方がないから前を向いて、でも忘れることは出来なくてどこかずっと引きずっている。心はまるでマーブル模様のようにその時々で違った面が顔を出し、静かに緩やかにかき混ぜられていく。

Hoopsの音楽はとても格好いい。心地の良い絶望、村上春樹の海辺のカフカ的なそれを嫌う向きもあるかもしれないけれど、でも僕には染み渡るように入ってくる。いじらしい自己憐憫のサウンドトラック、シャレにならない事態じゃないし、どうにもならないわけでもない、だけど僕らは傷つき涙を流し、記憶をたどって良かった時を思い出したりもする。


Hoops - "On Top" (Official Video)


頭を抱えて天井を見つめ、今が最悪な時じゃないって安心する。でもだからといって悪くないわけでもない、極端に走らない感情、ゆっくりと静かに沈み込み歩みを進めるオフビートの走馬燈、それはお洒落で格好良くそうしてとても気持ちが良い。

でも、今だって決して悪いわけじゃないだろう?

思い描いていた未来は消え去り、残された現実を眺めて言う。 Routinesとはつまり日々の生活でそれは最高ではなくともそう悪いものでもない。どこかで折り合いをつけなければいけないけれど……でもやっぱりあきらめきれない、何かを失ったという事実を引きずる毎日、そんな人生のサウンドトラック。

これは傑作。どうして1stアルバムにしてこんなにも傷ついているのかはわからないけれど、Hoopsは素晴らしいアルバムを作ったと思う。EPの時から決してお洒落なだけじゃないって信じていたけど、本当に良かった。

でも人生ってそう悪いものでもないだろ?

悲しみに心を支配されないで、かといって感情を無視することもしない、今だってきっと良い部分がたくさんあるはずで……。

でも生きているって悪くないなって思えるだろ?

僕らはそれを繰り返す。そうしてひっくり返してもう一度。これは素晴らしいレコードだって僕はそう思う。これは本当に素晴らしいとそう思う。





2017/04/29

世界は春で、僕はPhoenixを聞いて、The Strokesを見た

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世界は春で、僕はPhoenixが聞きたくて、そうして気がついたらアナログを買っていた
やはりこのアルバムは名盤。まぁタイトルからしてそうだろうって感じだけれど(Wolfgang Amadeus Phoenixだなんて、まぁ素敵)。


Phoenixもちろん格好良くてお洒落だけれど(このジャケットを見たかい?)、でもそれを見せびらかしたり主張していない感じがして好き。格好良くあることを目的としているんじゃなくて結果そうなっているんじゃないかってところが好き。この絶妙な抜け感、そこが本当に素晴らしいんだって!




「Phoenixってあれだろ?ファッション誌とかによく載っていそうなやつだろ?どうもお洒落の象徴になってる感じがして気にくわねぇな。これさえ挙げておけばOKみたいな。それで自分もお洒落ピーポーの仲間入りができるって思っているんだろう?」

そう言うのもわかるしそんな音楽だってたくさんあるけれど、でもPhoenixはだけは別、って言いたくなるような特別感がここにはある。だってお洒落だって主張していないんだもの、結果そうなっているだけで(と僕には思える)。だからお洒落な音楽ですよって言うところだけを強調した日本の広告戦略は好きじゃない。それはウェス・アンダーソンの映画でも似たような事を思っていて……でもそれで正しいんだろうけれどさ。

まぁいい、とにかく見よう、天才マックスの世界(Rushmore)!
聞こう、The Creation!




Yes、ジェイソン・シュワルツマン!!

はっきりしているのは、Phoenixのヴォーカル、トーマス・マーズの奥さんがソフィア・コッポラでソフィア・コッポラはジェイソン・シュワルツマンのいとこで、彼はウェス・アンダーソンの映画によく出ていてやっぱり世界は繋がっていて、ソフィア・コッポラの兄のロマン・コッポラ(つまりフランシス・フォード・コッポラの息子だろ?)の撮ったThe StrokesのビデオがThe Strokes史上一番格好いいビデオであるってこと。

頭がこんがらがって、ぶっ飛んでしまう前にまずはこのビデオを見るべき。飛ぶ前に見よ!



結局、格好良いものは格好良くて、良い音楽は良い音楽でお洒落なものはお洒落なもので、自分の好きなものをファッションアイテムにして欲しくないなってそれだけなんだけれど、でも格好良いからファッションアイテムになるわけで……あぁ難しい。
だけどやっぱり名前を挙げておけばいいっていう風にはならないで欲しい。

何かを利用し利用される、世の中ってそんなものかもしれないけれど、良いって思った音楽や映画を素直に良いって言えるそんな環境が少しは欲しい。春なんだし、革命だよって僕は言う。







2017/04/23

負けた日に聞くトップ・ファイブ・リスト

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なぜ?なにがいけなかったんだ?どうして、だけど、もし、だとしたら、次々と浮かぶ後悔と疑念の言葉の数々、選ばれなかった選択肢、消えてしまった未来、台無しになった一日、お気に入りのチームが大事な試合に負けた日(しかし大事な試合とはいったいなんなんだろう?)僕はやっぱり落ち込む。

そうして同時に考える、今この瞬間にあの曲を聞いたらとても気持ちが良いんだろうな、そうしてダメになっていく、負けた日に聞くトップ・ファイブ・リスト(ニック・ホーンビィのハイフィディリティはいったい何人こんな人間を作り上げたのか?でも単に現象に名前を授けただけなのかも知れない)。


1. Elliott Smith - Everything Means Nothing To Me


その瞬間に僕の心を支配する感情は怒りではではない虚無だ。大事なものを失ってしまったことに対する喪失感(そもそも失ってしまったという考えが出て来ることがおかしいのだけど)、慰めの言葉や良かったポイントを解説する声も何の意味ももたらさない。ため息と時間だけがその傷を癒やす為の薬で、それは半ば自暴自棄になったElliott Smithが与えてくれる。しかしもちろんこの行為も何の意味ももたらさない。


2. Shocking Pinks - Not Gambling





そうして僕は考える、選ばれなかった選択肢についてだ。傷口をぐりぐりといたぶるような自傷行為。もうどうしようもならないのに、どうにかなった場合のことを考える。あきらめきれないあきらめ、うまくいかなかったけれどでもあれは正しかったんだとそうやって自分を納得させる。Not Gambling、今となってはどうとでも言えるけれど……たどり着けない答えに感じる孤独。


3.Beck − Everybody's Gotta Learn Sometime




深まる孤独。しかし心は落ち着いて次第に未来を見据えるようなる。我々はこの経験に学ばなければならない、インタビューに答えるそんな監督の言葉だって聞こえて来る。こんな日だってあるしこうなってしまった原因だってある。それを探し続けることが大事だけれど、今の僕らには立ち直るための愛が必要だ。


4. Metronomy - On Dancefloors


この気持ちわかるかい?泣いたらちょっとすっきりしたよ。あきらめたことで手にした希望。後ろは向いてはいてもそこに残った可能性を探している。これを糧にしてここから多くを……台無しになってしまった一日を立て直す為に踏み込むステップ。それはあきらめによってもたらされる。それはきっと未来の為のあきらめ。


5. Lowell - The Bells




今の僕には癒やしが必要なんだ。頭のおかしいベルトーチカ、とち狂ってお友達になりにくるカテジナ、癒やしはやはり女性によってもたらされ(くやしいけど、僕は男なんだな)、ビートがありバウンスがあってベルが鳴る。それこそが希望、立ち直るきっかけ。傷ついた心は傷跡を残しつつも次第にふさがっていき、そうして次の試合がやってくる。何の意味もないけど僕はそこになにかを感じる。繰り返しのビートに意味を求め感じる行為、それがきっと……。









2017/04/13

優しい幻と宇宙の緩やかな崩壊 〜Everywhere At The End Of Time Stage 2〜

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優しい悲哀、少しずつ緩やかに崩れ落ちていく。


Everywhere At The End Of Time Stage 2、それはまるで良く出来た映画の続編のようでもSFモノのバンドデシネの新しいチャプターを読んでいるかのようでもあって……。このStage 2はStage 1と同じように古い映画音楽みたいな曲が多いけれど、ストーリーが一歩先に進んで前作と地続きのようでありながら伝わってくる感触がまた少し違う。穏やかな崩壊、Stage 2から感じたのはそんなイメージ。
The Caretakerの音楽はまたしても僕の頭の中のなにかを揺さぶってくる。


見たこともない景色、行ったことのない場所、誰かの呼ぶ声、心に感じるのはもうよく知っているかのような不可思議なノスタルジア。頭の奥底に沈んだ前世の記憶、見知らぬ星の思い出、いくつもの景色が浮かんでは消えていく。僕は馬車に揺られて旅をしている、白くまぶしい暖かい光を浴びて揺さぶられ、かって知ったる知らない場所へとたどり着く。

他人の記憶は自分の記憶、そしていつしかその境目が曖昧にになっていって……。優しさで充たされている場所、白い柔らかな光を浴びて、目を細め忘れてしまった夢の続きを垣間見る。そうして浮遊する魂、足元はおぼつかないし、そもそも足がついているかどうかも怪しいものだ。優しい音に導かれ風に乗り運ばれるようにして……存在の希薄さ、頼りない肉体の境界線、ふわふわと揺れる空気に漂って、時代も場所も越えたところ……頭の中にはもうひとつ宇宙がある。そうじゃなければこの記憶はなんなんだ?

優しい幻、不確かな核心、どこにもたどり着かないようでいて、かってそこにあったであろう故郷へとたどり着く。知らない時、知らない場所、知らない記憶のノスタルジア。それは静かに優しく崩れ落ちていく。暴力性のない緩やかな崩壊、あるいはそれが朽ちていくということなのかもしれない。



The Caretaker - Everywhere at the end of time  Stage 2


これは本当に素晴らしくて……なんて言っていいかわからないけど、聞いている最中は穏やかな感情の波に支配されて上手く筋道を立てて考えられなくなってしまう。頭の中に知らない誰かの思い出が流れ込んで来るような感じで、ぼんやりとしたぼやけた映像が浮かび穏やかに緩やかになでられるようにして心が揺さぶられ、ぼうっとした時間を過ごしていく。それは決して嫌な感じではなくて、安らぎと言ってもいいような気がするけれど、だけどそれは達観したあきらめなのかもしれないってそんな風にも思えてしまう。

こんなジャンルの音楽をなんて言ったら良いんだろう?エクスペリメンタル?そうかもしれないしそうじゃないかもしれない。ネイティブアメリカンの逸話に出て来るような魂の解放はもしかしたらこんな感覚なんじゃないだろうかってそんな気さえする。

宇宙はわれわれひとりひとりのなかにある もしかしたら本当にそうなのかもしれない。

そんなだいそれたものではないって言われてしまうかもしれないけれど、でもこの音楽を聞いているとやっぱりなんだかそんな気がしてきてしまう。

Stage 2、宇宙はまだ消えてはいない。
死はなく生きる世界が変わるだけだ そうかもしれないしそうじゃないかもしれない。