2018/04/20

街の匂いとGoat Girl

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Goat Girlは街の匂いがする。アルコールの匂いのするゴミ捨て場や建物の影に潜む人影、時たま聞こえるエンジン音、空は漆黒から濃紺へ、そしてだんだんと白んでいく。千鳥足で歩くこの街には歴史が内包されいて人の営みが刻み込まれている。今この瞬間に通りで展開されるドラマもやがて歴史の一部になる。

かってあった出来事が積み重ねられて今が存在している、人の活動が歴史を作り時間の流れによって形を少しずつ変えられながらも街はそこにあり続ける。聞いていてそんなことが言いたくなるようなこのアルバム、トラックの隙間がなく様々なタイプの曲が混沌としたまま一つの塊となって存在し、ロンドンという街のイメージを描き出す。吐き捨てるようなボーカルと低音を効かした演奏、過度に加工せず生々しさをそのまま残した録音が街の空気を表現する。

車やホテルの窓から眺める綺麗な夜景ではない、ストリートのただれた人間模様、街には情念が渦巻いていて、それらを眺め距離を置き巻き込まれないようにしながらも頭の中にその光景が残り続けて知らないうちに行動が支配されていく。I don't really mindと言いながらずっと気にしているLittle Liar、この曲からCountry Sleazeになだれ込む瞬間にいつもフォーと歓声を上げたくなる。


Goat Girl Country Sleaze at The Montague Arms, Peckham.)



同じサウスロンドン、ウィンドミル系のShameは今何が起こっているのかを考え自覚的にシーンに関わっているように見えるけれど、Goat Girlはそこから少し距離を置いているように思える。音楽やビデオだけに止まらずTwitterでも積極的に自らの意見を発信しSorryやHotel Luxのような同じシーンに属するバンドに賞賛を惜しまないShameに対してGoat Girlは宣伝用のアカウントすら持っていない。FacebookとInstagramのページはあるけれどそこでも意見を表明したり他のバンドと積極的に関わろうとはしていない。Shameとは違うアプローチをしているっていうかアプローチ自体をしていない感じ(SNSでバンドを推し量ろうとするのはどうよって思わないこともないけど、でもスタンスとして多少は現れるものもあると思う)。

口癖みたいな I Don't Care(Pt. 2まである)にnobody will mess with meと唄うCountry Sleaze、しかしそんなことを言いながらもGoat Girlはいつも街の誰かを気にしている。
細かく歌詞を見てもこれはEU離脱の国民投票のことだったり移民問題のことなのかなとかもしかして#MeToo運動を受けてのことだったりするのかなって思わされるような部分があったりして、今の時代のロンドンという街の空気がきちんとそこにあるような感じがする。それはアンチ保守党を掲げる政治的なバンドということではなくて、目の前にある街を描いた結果そうなってしまっただけなんだろうけど。




Goat Girl - I Don't Care (Austin Session: SXSW 2018)



そんな風に現象を直接的に描かずに物語を経由し距離を取って匂わすだけに留めているから、Goat Girlは柄が悪いのに品があるってなんだかおかしな魅力を醸し出しているんだよね。チンピラ的な柄の悪さがあるのに前のめりに突っ込んだりしないで、一歩引いた余裕があって、その余裕がスケール感につながってクールな奥行きを感じさせているってそんな風に思う。いらだってはいるんだけど怒りを吐き出しているわけじゃなくて状況を眺めニヒルスティックに一言自分の意見を言ってやるって感じで、そのスタンスというかバランスが凄く好き(今、気がついたけどこれCountry Sleazeの歌詞そのものだ)。
基本的には柄が悪くて適当なんだろうけどそれだけじゃない懐の深さを感じさせる人間的な魅力に溢れているなって。まぁつまり好きってことなんだけど。

そしてこのあたりがGoat GirlにThe Libertinesをずっと感じていた要因なのかもなって思ったりもする。The Libertines初期のPlan Aなんかは音的にも似た部分があるような気がするし。もしかしたら曲作りの根底がアコースティックな部分にあるっていうのもあるのかもしれないけど。とにかく最初に聞いた時からThe Libertinesと似た匂いをずっと感じていた。


The Libertines - Plan A 


マジで10年後にはこれはThe Libertinesの1stと同じくらい重要なアルバムだよって言っているような気もするんだよね。混沌とした街の記憶がレコードの溝に刻み込まれていると思うともうそれだけで最高じゃない(そうじゃなくても最高だけど)。

こんな感じで褒めちぎっていたら後で恥ずかしくなっちゃうのかもしれないけど、歴史とはあの時がそうだったと後で気がつくものだから(僕はこれをフットボールから学んだ)。少なくとも自分にとってのこのアルバムがそんなアルバムになるんじゃないかって気がしているし、間違っていてもそれこそ I Don't Careだって。今そう思えるだけでも確かな価値があるんだから。



2018/04/03

冬から春へ、2018年1月から3月によく聞いたアルバム

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Shame - Songs of Praise





Shameはマジだぜ。強い意志を持ち何かを変えようともがき考え口を出す。それは若さのなせる技なのかもしれないけれど今の世界、シーンを見回しどう立ち振る舞うべきかを常に考えている。暑苦しい押しつけ?もしかしたらそうなのかもしれないけれど行動に宿る魂というものがある。革命前夜の鼓動のような怒りと苛立ちにロマンスを少し振りかけてそこに直接的ではない物語をプラスする。そうやって方向性を与えられたエネルギー、振り回さずに強く静かに拳を握り旗を振る。






Shopping - The Official Body



アクセルを踏んでカーブを曲がる。スピードは緩めない。アクセルを踏んでカーブを曲がる。OK、悪くいえば一本調子なのかもしれない、でも僕はこれを淀みがないと表現する。決して止まることなく滑らかにアルバム全体通して走り抜ける。それはくるくる回るショートトラックのスピードスケーターの如く、繰り返しの中の快感を僕は見つけた。過去最高にバランス調整されたこのアルバムはPigbagのようでもB-52’sのようでもあって……とにかくお酒を片手に踊りたい。







MGMT - Little Dark Age



マジで侮っていたMGMT、ごめんなさいと懺悔の日々。80年代のMTVのいいところだけを抽出したようなシルキータッチ夢見心地のソフトなサイケ。1stアルバムにあった切り込んでくるような緊張感はないけれどアルバム通して楽しく聞ける。なんていうかブラウン管のテレビを見ている気分になるんだよね。その番組はきっといい番組で……とノスタルジックに今を見る。






Holy Motors - Slow Sundown




Holy Motorsって名前だけれど、中身は完全にリンチの世界のハネムーン。決して幸せになれない白黒世界のロードムービー、不穏な空気にあてられてうねりざわつく心、静かな快感、恍惚とした時間に浸る31分。






The Orielles − Silver Dollar Moment





インディポップ然としていながらひねくれていて、かわいさを売りにせずとも伝わって来る雰囲気があって時に奇声を上げつつ体を揺らすっていう良く出来たパーティの前半戦みたいなアルバム。これから先にきっと何かが起きるという予感がし、心が躍り期待に胸が膨らみお喋りする、それが幸せってものなんじゃないかって時々思う。 Silver Dollar Momentってつまりはそういうことなんだろ?
そして姉派妹派、さんざん迷ったあげくThe Oriellesで一番かわいいのはギターの男の子、Henryなんじゃないかって真理にたどり着く。






Insecure Men - Insecure Men





温もり感じるFat White Family、スリルを抜いて滑らかな優しさをプラスする。途中Joe Meekっぽい展開を挟みつつ最後まで温もりをしっかりと感じさせるこのアルバム、攻撃性もきっとどこかに潜んでいるんだろうけど、聞いていて一番に感じるのは優しさに温もり。でもそれはもしかしたら厭世的なものなのかもしれないって同時に少し考える。






Soccer Mommy - Clean



完璧なSoccer Mommy、具現化されたオルタナティブ、彼女はオルタナ版のDisney girlsだってそう思う。寄り添いつつも突き放し内省的だけど閉じてはいない、落ち着きひんやりしているけれど中には確かな熱がこもっている。過不足がない完璧なバランス、これぞUSオルタナガールだってファンタジーワールドの中で僕は思う。





Sorry - Home Demo/ns Vol II



こいつはいったいアルバムなのかい?と再びそんな疑問が浮かんでくるけれど良いものはいいから仕方がないのSorryのミックステープ第二弾。意図してのことかはわからないけどグランジに寄せたDominoから出た2作品とは違いバラエティに富んだ内容。そうしてデモを聞くたびにLouisの良さに気づかされる。AshaもだけどLouisも凄い才能を持っているってそんなことを思うVol II、Sorryの凄さっていうのは引き算のセンスなんじゃないかってそんなことだって思うし最高だし、色んな要素が調和して塊になっているっていうのがやっぱり最高。






Amen Dunes - Freedom





もしかしたら一番似ているのはDestroyerのKaputtなんじゃないかって思うこのアルバム。ロマンスがそこから削られて淡々とした空気の中、静かな後悔の念が渦巻き続ける。けどやっぱりこの声だよね?それが全てを決定づけているんだから。
愛とはその隙間を埋めるもの、OK、本当によくわかったよ。舞台の上のモノローグのように静かに深く染みこむ歌声。






2018/03/24

彼女は正しいオルタナ女子〜フットボールファンにとってのSoccer Mommy〜

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なんだかんだと言いながらSoccer Mommyのアルバム(Clean)をよく聞いている。そして思う、やっぱり彼女はオルタナとして圧倒的に正しいと。 続けて考える、彼女のこの正しさはバランス型の主人公的な正しさで、文句がつけられないくらいの出来の良さに文句をつけたくなってしまうという天邪鬼がここにいると。例えばほらこの曲。


Soccer Mommy - Your Dog (Official Video)


"I don't wanna be your fucking dog" イギー・ポップをもじったこの言葉、まさにこんなことをオルタナティブな彼女に唄ってもらいたいたかったのではないかね、諸君?しっとりとした曲調のなかでも(しかしビデオは全然しっとりしてなかった)自分の考えをしっかりと持って毒を吐く、これぞ正しいインディ・オルタナ女子。Julien Bakerほど感情的ではなく、Jay Somみたいにバンドよりではない絵に描いたようなオルタナ女子的正しさ、思えば最初のEPのジャケットからして彼女は正しかった。





そしてこの写真も。もう完全にウェス・アンダーソンのザ・ロイヤル・テネンバウムズ、グウィネス・パルトロウが演じたマーゴを意識してるよね?意識してなくとも頭に浮かんじゃったからにはNicoのThese daysが流れ出す。



The Royal Tenenbaums Soundtrack - These Days


このあたりもなんともずるい。狙っているのに狙っていないっていう女子的ズルさにわかっているのに積極的に騙されようとする男子のセコさがもつれ合って事態をよりわかりにくくする(かわいいは全てにおいて優先される)。

しかし僕は騙されない、と、こんな風に思うあたりがもう騙されている。あいつのことなんて別に好きじゃねーよって言いながらよく話に出て来るのはそれってやっぱり凄く好きだからなのかもしれない(指摘されて恥ずかしくなるパターンの好き)。

でもさ、圧倒的に正しいものをみると本当にそうかと疑ってみたくなる気持ちってない?これって単に捻くれているだけかもしれないけど。でもいつの頃からか漫画の人気投票で主人公が1位にならないことが当たり前の時代になって、最大公約数的な正しさ、みんなにとっての最高よりも自分にとっての特別が求められる時代になったのかなって思ったりもする。単に選択肢が増えたってことなのかもしれないけれど。

とはいえ、Soccer Mommyのアルバムはとっても出来が良い。そして彼女はやっぱりオルタナとして圧倒的に正しい、考えてみればsoccerって言葉自体もオルタナティブだもん(フットボールではないアメリカンフットボールがあってアメフトではないサッカーが存在する)。

そうやって今度はオルタナティブとはいったいなにかと、オルタナティブって言葉について考え出す……(オルタナティブとは特権意識、あなたとは違うんですと思うその心)。

今や最大派閥になったあの子の良さに気がつけるのは自分だけ派、オルタナティブ(特別)が大きくなってそれに対してのオルタナティブ(特別)が欲しくなってしまうけれど、でも良いものはやっぱり良いんじゃないかって思ってもう一回Soccer Mommyを聞き直す。

そう、なんだかんだと言いながらSoccer Mommyのアルバムをよく聞いている。



2018/02/28

インターネットのズルさと凄さと時代の空気

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Twitterで見かけた人の言葉を頭の中でぐるぐる回して考える。
「インターネットのズルさ」この言葉なかなか面白い表現かも。

なるほどインターネットはどこでもドアだから旅の道すがらの発見みたいなものはないのかもしれない。The Libertines聞いてThe Smithsを知ってThe La’s を見つけてThe Clashにたどり着きThe Jamを横目にThe Kinksを経由してThe Beatlesを理解するってそういうのがなくていきなりThe Beatles最高!ってなる感じ。それは路線図のない鉄道みたいなものだから、当然その途中でイェイツを発見して時計じかけのオレンジを見たりすることもない。

距離を一瞬でゼロにできるのがどこでもドアの魅力で凄さでそれが20世紀に考えられた22世紀のテクノロジー。どこかでThe Libertinesが影響を受けたのはやっぱりThe Clashだよね、The Clashにもいたミック・ジョーンズって人がプロデュースしてるしって言葉を見かけてYouTubeだとかSpotifyだとかの検索窓にコピーしてそうしてあっという間にThe Clashの良さを知った気分になれる。

こうした世界で大事なのは名前を知るということで、それは読めなくたって構わない。チェック、チェック、チェック、右クリックにワンタップでラインを引いてそうしたらインターネットが教えてくれる、OKグーグル、僕らは未来に生きてるぜ。

まぁこういうところがきっと「インターネットのズルさ」だよね。読み方なんてわからなくても見つけられてこのバンド好きだなって普通に言えるもん。めんどくさいことなしに即座に曲を聞けるって本当に素晴らしいことだけど、そうじゃない価値観を知っているとこういうのをズルって感じてしまうのかもしれない。自分で見つけなくても誰かが教えてくれるし奨めてくれる、それがあっという間に自分のものみたいになる、こんなに便利で良いはずがないってまぁそんな風に思っちゃうよね。

「しっかり出汁を取ったの?こんなインスタントの出汁でなんかでおいしいお味噌汁が出来るはずがないじゃない?」それは正しい意見だし間違っている。

さっきのThe Clashの話だとメモをしてお店に行って探してたり学校で詳しそうな奴に「なぁThe Clashって知ってるか?」って聞いたりしないで自分の部屋のベッドの上から1979年のロンドンに辿り着けるってこと。当たり前になっちゃってるけどこれはマジで凄いと思う。


The Clash - London Calling (Official Video)



でも同時に「The Clashね……なぁこの前授業でコントラクト・キラーって映画見ただろ?カフェで唄っていたのがThe Clashのヴォーカルだよ」ってそこから映画談義に繋がったりすることもなく、翌日「ほらよ」と机の上にどさっと大量のCDが置かれてその中にGang of Fourが入っていてそれが僕の人生を変えることになった(夜な夜な電子レンジを金属バットでぶっ叩く)みたいな展開もなくなってしまうわけで。




そんなのは漫画の中でしか起こらないのかもしれないけど、でももしかしたら今じゃ漫画の中でも起こりにくくなってしまったのかもしれない。

つまり一瞬でワープ出来ちゃうから寄り道が発生しなくなっちゃったってこと。音楽にファッションに映画に本に時代の空気、その他諸々、曲だけじゃもったいないでしょ?それじゃハイライトだけで試合を見たような気になってるだけだってって言われてしまうかも知れない部分、こういうのがたぶんインターネットのズルさって表現されちゃうところなんじゃないかって思う(しかしここで同時に試合をフルで見てさえいれば偉いのか問題も発生する)。

でもこんな試合のハイライトまで見られるんだ?っていうのがインターネットの凄さだよね。たぶん欧米の音楽は雑誌やなにやらで昔もたくさん知れたんだろうけど、例えばEyedressみたいな音楽は昔じゃ知る機会はほとんどなかったんじゃないかって思う。アジアの音楽、マニラ・フィリピンのシーンがどうなっているか知らないけれど、こういう音楽が知れたのはインターネットがあったからだし、こういう音楽が出来上がったのももしかしたらインターネットがあったからなのかもしれない。


EYEDRESS - NATURE TRIPS


結局、インターネットにもいい面、悪い面が両方あるから、時と場合によって使い分けていこうぜって思ったってそういう当たり前の話だけどさ。しっかり出汁をとったお味噌汁はおいしいし、インスタントのみそ汁にはインスタントの良さがあって、どこでもドアでたどり着いたその街を散策しちゃいけないってわけでもない。それに時代の空気みたいなものはインターネットの世界にも漂っている気がするんだよね、リアルタイムで経験しているから気がつきにくいだけで。

そしてフィジカルリリースのレコードやらTシャツやらジンやらグッズが欲しくなってしまうのはもしかしたらインターネットの外側、画面の中の世界と現実の世界がリンクしたって思える瞬間を味わいたいからなのかもしれない。ほら、目の前に本当に現れた!ってやつ。

まぁ足で稼ぐ刑事とPC駆使する探偵両方いても良いじゃん、仲良くやろうよって話ですよ。「インターネットのズルさ」ってこういう解釈でいいかわからないけれど。CD買わないで音楽聞いた気になってるんじゃねーよ的な話だとしても、インターネットは人間と同じく灰色の脳細胞を持っているということでどうかひとつ。





2018/01/24

第二次ブリットポップかもしれない現象とどこかに行ってしまった「The」

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あぁロンドンは燃えているのか?一昨年、去年から続くロンドン、UKシーンの盛り上がり、年初にリリースされたShameのアルバム(Songs of Praise)は期待通りに素晴らしく、これを皮切りにHMLTD、Goat Girl、Sorryのアルバムも今年きっと出るだろう。2018年、今年はきっとなにかが変わる、そんな思いを抱かずにはいられないお気に入りのバンドたち、Hotel Lux、Milk Disco、Peeping Drexels、Sports Team、Sons of Raphael、Cabbage、Childhood、Tangerines、Ugly、みんながみんな素晴らしい。


Shame - One Rizla (Official Video)

しかし同時においおいいったい全体「The」はどこにいったんだい?とそう思わずにはいられない。マジで「The」はどこに消えたんだって?

消えたThe、奪われた座、雨が降っても固まらない地、あのそのこと、特定されることを恐れるネットの世界、ちょっと混乱してきたので初心に返りThe Theでも聞こう。

いやまぁね、Hotel Luxとかはわかるけど(本当にあるホテルの名前だし)SorryとかShame、UglyとかはTheをつけるものなんじゃないの?Sorryなんかは実際、前の名前のFishに「The」がついてなくて、それでおまえら勝手にFish様の名前を使ってんじゃねー、その名前を名乗って良いのはMarillionのFish様だけなんだよ!ってファンに怒られて改名したんでしょ(でもこのエピソードたまらなく好き。その後つけた名前がSorryってところが最高)。

The FishだったらOKだったかは置いておいたとしても「fish」だとか「sorry」だとか短い単語に「the」をつけないのはなんでなんだろうとは思う。The WhoとかThe ClashとかThe PoliceとかThe Fallみたいに「s」がつかないバンドでも「The」はついてるじゃん?このあたりの感覚は詳しくないからわからないんだけど、つける場合とつけない場合の意識にどんな違いがあるんだろう?マジで特定されることを恐れてるのか?検索しにくいことこのうえなし。バンドの方のSports Teamってもうわけがわからないよ!





でもよく考えてみたらブリットポップのバンドもそうだったよね?Oasis、Blur、Pulp、Suede、Supergrass、むしろなんでThe VerveにはTheがついているんだってそんな感じすらする。なんでなんだろう?深い意味なんてなくてみんなつけてないからつけないってだけなのかな?でも、そうだとしても流行っているってことに意味がある気がする。


Pulp - Do You Remember the First Time? (Loreley 1998)



まぁいい。今はこれは偶然じゃない、気がついていないだけでこのムーブメントは第二次ブリットポップなんだよ!ってそんなことを叫びたい。すべての現象には理由があり、今のこのシーンは実に興味深く盛り上がっている。まぁブリットポップがなんなのかよくわかっていないところもあるけれど。




2017/12/29

2017年のベストトラック 20

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1. JW Ridley - Everything (Deathless) 




このビデオを見れば全てがわかる、だからもう言葉はいらないのかもしれないけどそれでも書く。JW Ridleyの素晴らしさ、陰鬱なドライヴ感に詩的な歌詞、自然とJoy Divisionって言葉が頭に浮かぶし心がざわつく。美しい若者が奏でる陰鬱な音楽、これに心を奪われない人間がいるだろうか?美しいものが嫌いな人がいて?ララァはそう言うし僕も思う、そこには決して消えない光がある。


2. Dead Pretties - Confidence




Dead Prettiesはもういない。ガキみたいに見えるけど言ってることはマジだぜ!その言葉通り本物のパンクスだってことを証明してアルバムを出す前に解散した。二枚目の、そして最後の7インチ、キレる一歩手前で唾吐くヴォーカル、怒りと主張、若さをバッグに詰め込み壁の向こうへと放り投げ、あっという間に消えてった。


3. Sons of Raphael - Eating People





圧倒的な存在感、モジャモジャ頭にクールなイケメン、LoralとRonnel、サイエントロジー創始者の名を持つ兄弟二人、思春期に抑圧された魂を解放させる。チープなドラムマシンを前にギターをかき鳴らしぶちまける思いの丈、しかし暴力はなく屈折した心と複雑なシチュエーションがそこにある。なにはともあれ特筆すべくはそのキャラクター、なにかが始まる予感が確かにする。



4. COLD CAVE - GLORY



1982年のJoy Division、ありえなかった歴史の揺らぎ。勝手に意見を押しつけ想像し消えた未来を夢見る日々、退廃的なNew Orderみたいなそんな曲。Cold Caveで一番好きかも。



5. Joy Again - Kim




EPといい今年は良い曲いっぱい出したぜ、Joy Again。なんでもなさそうでいて癖になる、そんなフック一発二発であっという間に心が躍りKOだ。ベッドと言う名のマットに倒れ込んでは考える。つまりは女の子の話なんだろう?枕に顔を埋め、手足をバタバタさせて聞きまくる。なんてことない特別な、僕らの日常。


6. Alvvays - Plimsoll Punks




あざといくらいの声の使い方、彼女は自分の可愛さをちゃんと知ってる。だから心だってあっという間につかまれる。それはまるでデコレーションされたケーキのごとく過剰なようでいて無駄がなく、口にすれば直ちにおいしさが広がってすぐさまもう一口食べたいって気にさせられる。広がる幸せ、たぶんこれがポップソングの魅力ってやつに違いない。最後に声が裏返るところなんてそれはもう……。

7. Goat Girl - Cracker Drool




サイコガレージ、最高ビリー、この引き出しもThe Libetinesを思い起こさせて……60年代マナーのあれこれ、Goat Girlはマジでいい。本当に大好き。期待に胸を膨らませアルバム待つ。


8. Peeping Drexels - The Goof




やっぱりそう、ロンドンのストリートのあの匂い。乾いた音にがなり気味のボーカル、感じる色気、不良の魅力、何度だってそれに騙される。パンクの魔法はセクシーの矛盾、乾いているのに濡れている。


9. HMLTD - Music!





80年代の少女漫画が夢見たSF世界のバンドHMLTD。メンバーみんなが近未来からやってきた。近未来とは空想世界、魅せることの大切さを自覚して、自らの手で夢の世界を作り出す。もちろん大事なのは音楽だけど、しかしムーヴメントはいつだって音楽以外のものと共にあった。今、何かが起きている、それを知り意志を持ち、魅せる彼らは強く特別、結局のところ主役は人間なのだから。だからつまりライブがみたい。



10.  Lolina - Keep It Movin'



微妙なズレの心地よさ、癖になる不穏な空気、いつものInga Copelandといえばそうだけど、これは過去最高に癖になる。日常のふとした瞬間に口ずさむ、cash and carry, cashing carry on 呪詛的なのに明るい響き、不穏で不思議にニュートラル。相変わらずわけがわからないけれど、わけがわからないからこそ魅力的。


11. Hotel Lux - The Last hangman





パブ、隣の席の若者たち、彼らは酒を飲んではくだを巻く。議論は白熱し、頭でっかち的に繰り返される引用、それが妙に耳に残って……。苛立ち、失望、悲しみ、怒り、しかしそれをストレートには出さない。酔っ払ってはくだを巻き、議論をしては煙に巻き、本や映画や歴史から教訓を得ようとする。最近マーク・E・スミスのような、つまりThe Fallスタイルのバンドが増えたのはきっと世の中に対して言いたいことが増えたからなんだと思う。主張とは直接的ではないからこそ意味がある。感じるための言葉、考えるための出来事だってHotel Luxはたぶんそいつを知っている。


12. Sports Team - Beverly Rose





3分弱、172秒で広がる世界、スタッフロールが流れてきそうなリフから展開していってあれよあれよと進んで行く。ボリューム感はあるけれど胃もたれはしないPavementマナーの歌謡劇、ドラマチックにまた来週、なんとも言えぬ満足感。


13. Heaven - Lock & Key




スクリーンの向こうの世界、思い描いた夢の形、それをここまで表現してくれるのならもうなにも言うことはない。頭の中で古き良き時代の見たこともない映画が展開されて、それでずっと幸せな夢を見ていられる。それならChromaticsでいいじゃない?そうかもしれないけれど、しかしなんだかどこだか違う。



14. Trouble - Snake Eyes




だって格好いいんだもの。このギターの音だけで持って行かれる。デヴィッド・リンチの息子の非常にデヴィッド・リンチっぽい音楽。そういえば初期のDirty Beachesもフィルムノワールっぽい雰囲気でリンチっぽかったかもしれない。体でリズムを取りながらそんなことだって考える。格好いいものは理屈抜きでも格好いいし、理屈があっても格好いい。


15. Patience − White Of An Eye 



思いを馳せるブラウン管、海の向こうの音楽たち。Veronica FallsのRoxanneのソロプロジェクトPatience、それは彼女が解釈する80年代なんじゃないかってそんな気がしてる。MTVの80年代、よりポップによりロマティックに、第三弾のこの曲はどこか出来の良いアイドルソングっぽさもあって……それってつまりStrawberry Switchbladeってことじゃない?そんな気だってするのです。ギターが入って来るところが本当に好き。


16. Buttechno - Mr Heroin




薄暗い頭の奥底で上映されている映画みたいなそんな音楽、ソリッドではなくドープでアンニュイ。グッドイブニング、ボンソワール、だけども感触は東欧の白黒映画みたいなそんな感じで……今夜もベッドのシートに沈み込む。


17. Wesley Gonzalez - In Amsterdam




ダメなんだろう、わかっている、ダメなはずだ、そんな風に言わなくても伝わってくるダメさ加減。In Amsterdamって曲のビデオをイビサで撮っちゃうこの男(おまえそういうとこだぞ)しかしこの愛おしさはいったいなんなんだろう?そこが魅力でそれが全てのポップソング、愛こそはすべて、駄目な僕、ジョン・レノンにブライアン・ウィルソン、良い曲っていうのはたぶんきっとそういうこと。おそらくだけどたぶんそう。


18. (Sandy) Alex G - Sportstar




オーガニックで奇妙キテレツ、伝統的な要素を継承しつつもへんてこりん。それをぐりぐりぐりぐり擦り合わせては混ぜ合わせ、そしたらなんだか素敵な調和が生まれてた。実のところ伝統ってやつには繰り返された実験が隠れているんだ、 最新鋭の伝統芸能、歴史とは常に未来へと進むもの。


19. Milk Disco - Weekender




強迫観念的なTalking Heads(時々フランツ)。そうだ、しなければならないんだ、僕はこの週末を楽しまなければ。麻痺したようなギターにあわせて襲ってくる感情、他の誰もがしているように、それは焦りを解消するための喜びで、楽しみはそこに存在しない。しなければならない、僕はしなければ、迫り来る強迫観念、得もいえぬUnknown Pressures。それはしびれのようにこびりつく。


20. Draa - Even In My Dreams (All My Life)






長くは続かないことはわかっている、この感情はきっといつか消えてしまう、しかしだからこそ素晴らしい。これ以上の未来なんてなくたって構わない、The Smithsを聞いてそう感じることができる今だからこその輝き。決して報われることのない青くはかない美しさ。




2017/12/05

2017年のベストアルバム

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1. The Caretaker - Everywhere At The End Of Time Stage 2





優しさと共に溶け出す思い出、走馬燈のように穏やかで静かな時間、柔らかな光に包まれた記憶のゆりかご、素晴らしい時間は確かにそこに存在し、そうしてそれは過ぎ去った。
シリーズ第二作、それは失われた違う惑星の思い出のようでもあり、前世の記憶のようでもあって……宇宙はわれわれひとりひとりのなかにある、そんなネイティブ・アメリカンの言葉だって頭に浮かぶ。居心地の良い、暖かい、柔らかな、記憶は変質しやがては失われていくのかもしれないけれど、出来ることならこのまま思い出に浸り続けていたい。ソラリスの海の中で感じる光、穏やかで優しい記憶、静かな波風がゆっくりと歩みを進めて向かってくる。たどり着くのはいったいどこか?






2. Sorry - Home Demo/ns Vol I



Sorryがなぜ特別なのかわかるかい?Dean Bluntの感性にInga Copelandの強い意志、Asah Lorenzはギターを手にひとりでHype Williamsをやっている。口からこぼれ出る言葉は社会を見つめ個人に寄り添いそれが上質なメロディでコーティングされている。意志を形に変える力、不穏な雰囲気を美しさに変えて閉じ込めた手作りの箱船、そこには世界の空気が詰まっていてボリス・ヴィアンの序文のようなそんな小さな部屋の強味を感じる。
その上もう一人のソングライターLouis O'Bryenが書いたであろう曲も素晴らしく、彼のヴォーカル曲がこのデモテープでもアクセントとしてこの上なく機能している(それはあっさり気味だがとてもよく……)。
だけど、デモテープだよ?それがどうしたんだい?そんなものはこのセンスを前にしてはもはや些細な問題だよとゴリ押ししたくなるポテンシャル、期待感と可能性、センスは全てにおいて優先される。人生でだいじなのはどんなことにも先天的な判断をすることだ、やっぱりボリス・ヴィアンがそう言っている。








3. Tangerines - Into the Flophouse





2017年、ロンドンは燃えているか?Goat Girlにそれを感じDead Prettiesに心を躍らせ、Tangerinesに思いをはせる、ロンドン、ストリートのこの匂い。奇跡のようだったThe Libertinesを知って以来ずっとそれを追い求めてきた。適当にかき鳴らされたようなギターにナイスなメロディがのっかって醸し出されるやさぐれた不良のロマン。洗練されたThe Strokes的なクールさとは違う路地裏の大衆文化のかき集め、パブで酔っ払い一緒に唄って次の店へと歩き出す。これでもかと詰め込まれた日常の、生活の愛おしさ、それがロマンへと通じる唯一の道で、そいつが物語に厚みを出す。まぁいいとにかくスコッチ飲んで乾杯だ。一緒に唄って眠ろう。そしたらまた新しい一日がやってくる。そこに感じる愛、愛しき日々とろくでなし。








4. Eyedress - Manila Ice



ロマンティストがさいなまれる無力感、世界はぐちゃぐちゃで悪がはびこり支配して、しかし自らの感性がそれに迎合することを許さない。それができたらどんなに楽か、しかしできないからこそ感性は磨かれる。どこに行っても違うもの、厭世的なアウトサイダー、でもどこかまだ世の中を信じていて……人間の美しさと愛おしさ、ロマンティストだからこそ信じられる未来、心地の良い音楽はジャンルを超え国を超えロマンと感性で繋がっている。







5. Kirkis - Vide 


ロマンティックを気取る変態、体はしびれに支配され、混沌がのたうち回りくだを巻く。現実は醒めない悪夢で夢とは幻、漂う危険な香りは現実感がないのに重さがあって、80年代ニューウェーブ期に存在していたのかもしれないホンモノらしさを演出する。薄暗い裏道に街灯のスポットライト、いてはいけない場所にいるってことはわかっているけどどうにもならない。ヤバさの魅力、隠された秘密、抗うことの出来ない幻覚、天井を見つめ目を閉じ考えそして聞く。そう、ヤバさはここに存在する。







6. The Horrors - V



幽体離脱、地上から立ち上る煙、その白い煙はまるで靄のように辺りを隠し、眼には影しか映らない。手を伸ばしそれに触れようとするけれど実体はなく気づけば雲になって浮かんでいた。不安で不穏な浮遊感、薄気味の悪いジャケットは肉体を捨てきれない未練がにじみ出ているけれど中身はもはやそこにない。不安、されど感じる心地良さ。








7. John Maus - Screen Memories


知っているか?この押し入れは宇宙と繋がっているんだぜ。はったりに誇大妄想組み合わせ嘘を本当に見せる詐欺師の男、80年代のB級SF映画のような胡散臭いホンモノらしさ、嘘だとわかる作り物のリアリティが形になって押し入れのスクリーンに映し出される。目の前に広がる宇宙、スピードあげる宇宙船、繰り広げられるスペースオペラ、チープさが癖になって繰り返す。だってわくわくしてくるだろ?スクリーンの向こう側の世界はいつだってそこに広がっている。






8. David West with Teardrops - Cherry on Willow



結局Rat Columnsと何が違うんだい?わからないそんなこと。わかっているのはこのジャケットが格好いいってただそれだけ。頭の中に広がるのは中期のThe Kinks、Muswell Hillbillies、緊張感が漂いつつも同時にリラックスもしていて、ニュートラルに数滴エッセンスを垂らしてコントロールされたようなそんなテンション。お茶を飲んで味を確かめぼんやりし、これからどう過ごすのか考えをめぐらし、そうこうしているうちに今度はお酒が飲みたくなってくる。とどろく雷鳴、そうしてまた最初に戻って繰り返し。







9. Hype Williams − Rainbow Edition


Hype Williams第二章、名を騙り姿を偽り再び架空の映画のサントラみたいな音楽を紡ぎ出す(しかし今回はTVシリーズかもしれない)。シーンを表現した短いトラックをつなぎ合わせてストーリーを描き出すそのスタイルに在りし日の面影を見るけれど、本当のところはわからない。全てがニセモノ、つかみ所はどこにもなく実体なんてないように思えるけれど、何かが起こりそうな不穏な音楽がここにある。








10. The Moonlandingz - Interplanetary Class Classics



暗がりで出会う道化師。The Fat White Familyのサウンドをベースにサイケを少し混ぜてメロドラマみたいな大げさな感情をプラスする。出来上がったのは怪しさ漂う舞台劇、大仰に見得を切ったヴェルヴェッツマナーの物語が展開され、混乱が調和して怪しいことが普通になる。正しさとはなんなのか?あたるライトの色次第で如何様にもみえるこの音楽、事実はひとつ、しかしそれが真実とは限らない。やり過ぎでもない、くどくもない、This is サイコーにちょうどいいサイケ、ショーンはおろかたぶんオノヨーコだってそう叫ぶ。